7/15~9/10開催の企画展「天下人の城」(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)について徹底リポート!

「天下人の城」〜徳川美術館応援団〜

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義元左文字(宗三左文字)など刀剣の鑑賞ポイントを知って後期展示を16倍楽しみましょう!

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いよいよ8月16日から後期展示がはじまります。
大幅に入れ替わる中でも、目玉のひとつが義元左文字などの刀剣です。(参考「なぜ天下人の城展は2回以上行かないといけないのか?前期・後期の入れ替えがすごい!」

展示されている刀剣は、それらが持つ歴史だけでも面白いものですが、美術品としての刀剣の見どころもわかれば、もっと鑑賞が楽しくなるのではと、応援団の悠さんが鑑賞ガイドをつくっていただきました。(タイトルの16倍は本日の日付というだけで特に意味はありません(^^))

■刃文

日本の刀剣類が美術品として鑑賞される所以のひとつが刃文です。まっすぐな刃文(直刃)と乱れた刃文(乱刃)が基本となりますが、様々な種類があり、時代・流派・刀工の特色が現れ、鑑賞上の大きな見所となっています。

◇直刃と乱刃

刃と並行した直線状の刃文を「直刃(すぐは)」と言います。時代が下ると、定規で引いたような技巧的な直線も見られますが、鎌倉時代初期頃までは、概ねフリーハンドのような直線で、良く見ると作為的でない、偶然できた細かく乱れた模様(小乱れ)が見られます。鎌倉中期頃になると、作刀技術の向上・武家文化の成熟により、流派や個人の特徴が強く表れた刃文が焼かれるようになってきます。

◇直刃(すぐは)

刃と並行した直線状の刃文を「直刃(すぐは)」と言い、刃先から刃文までの幅が狭いものを「細直刃」、幅が広いものを「広直刃」と呼びます。
今回の展示で、直刃・直刃調の刃文が見られるものとしては、【45 番】蜘蛛切丸(中直刃)、【46 番】義元左文字(広直刃仕立てに互の目足入り)、【101 番】鯰尾藤四郎(直刃調に小乱交じり)などがあります。

◇互の目と丁子

頭の丸い目の刃文を「互の目(ぐのめ)」と言い、小波型のものが基本形になります。しかし、実際にはもっと複雑な形になるものが多く、様々な形の乱れ刃が「互の目」と表現されます。また、互の目と同じく、乱れ刃の表現によく出てくるものに「丁子(ちょうじ)」があります。区別する際の目安は、底辺が広く末広がりの物を互の目、底辺が狭く、広がりのないものを丁子と呼ぶのが一般的です。

◇沸と匂い・相州伝備前

沸(にえ)・匂(におい)は、刃文と地の境目に見られる粒子のことで、この粒子が肉眼で確認できるくらい大きなものを「沸」、肉眼では確認できない程小さなものを「匂」と言います。沸は光にかざすとキラキラと輝いて見え、匂はぼんやりと霞懸かったように見えます。 基本的に、沸と匂は複合して表れますが、その中でも、沸が強くまたは広い範囲で出ているものを「沸出来」、匂が強くまたは広い範囲で出ているものを「匂出来」と言います。

【写真提供者】悠樂菴さま@gouyosihiro

長船派等の備前の刀剣の特徴として、「匂出来(においでき)」であることが挙げられます。対して、正宗などの相州物は「沸出来(にえでき)」になるのが特徴です。
しかし、南北朝時代に作られた 103 番の備前の長船長義の刀は、地刃ともに沸付いています。南北朝時代、相州伝(相州の伝法・作風)の流行に伴い、刀剣の一大生産地である長船においても、相州伝が取り入れられるようになりました。この時代の、備前伝(備前の伝法・作風)を基本としつつも、当時流行の相州伝を取り入れた備前の鍛治やその作風を「相州伝備前」または「相伝備前」と呼びます。
103 番の長義の刀は相州伝備前の典型です。

■ 帽子

切先部分の刃文の事を「帽子」と言います。様々な形状があり、刀工の手癖が見られる部分でもあるため、刃文とは別で一つの見所となっています。
丸く返る帽子が最も基本的な形で、全時代・全地域に見られる帽子です。丸みが比較的に大きなものを「大丸帽子」、小さなものを「小丸帽子」と言います。刃文が直刃の場合、帽子は丸く返るのが基本になりますが、刃文が乱れ刃の場合には、帽子が丸く返るものと、帽子も乱れるものの両方が見られます。

 

■刀身彫刻(刀身彫り)

刀身に施された彫刻を「刀身彫り」と言います。重量軽減などの実用を目的としたものから、装飾的なもの、宗教的な意味合いの強いものなど様々な彫刻があります。刀工自身が彫刻を施す場合もありますが、刀身彫刻を専門とする職人も存在しました。

◇樋(ひ)

刀身に沿って鎬地の部分に彫られた溝を「樋」と言い、最も多く見られる刀身彫刻です。刀身に沿って鎬地全体に深く棒状に入る「棒樋(ぼうひ)」が中でも一般的で、これは刀の強度を損なわずに重量を軽くするための工夫と言われています。

◇その他彫刻

古くは、仏画や各仏を表す梵字、密教具など、信仰に由来する彫刻が多く見られますが、時代が下り、江戸時代になると、草花文様や縁起物の文様など、装飾性の強い彫刻も現れました。

文・絵=

【主な参考文献】
・得能一男著(1973) 『日本刀辞典』 光芸出版
・徳川美術館編 (1992)『刀剣刀装具』 徳川美術館
・歴史群像編集部編(2006) 『「図解」日本刀事典 : 刀・拵から刀工・名刀まで刀剣用語徹底網羅!! 』 学習研究社
・渡邉妙子・住麻紀著(2014) 『日本刀の教科書 』 東京堂出版

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