徳川美術館に隣接する会席郷里の宝善亭にて、「安土御献立十六日之夕膳」を、史実に基づき現代風にアレンジした「信長御膳(3800円、3日前までに要予約)」が登場しました。
今回の展示品の一つである「安土御献立十六日之夕膳」は、武田家を滅ぼした後の戦勝祝いで訪れた徳川家康を安土城でもてなした、最高級の料理です。
当時、三河や尾張では食べられないような贅を尽くした料理が並び、さぞ家康もご満悦だったに違いありません。
さっそくその信長御膳を実食してきました!
学芸員によるアツイ史実アドバイスを元に誕生
織田信長など有名武将にちなんだ料理は数あれど、ここまで史実アドバイスに力がこもっている料理は他に類を見ないのではないでしょうか。
この御膳が完成するまでに2回差し戻しがあり、3回目にしてようやく完成した苦労の御膳なのです。
「すべて美味しいのは当たり前。しっかりとした史実があって、ワクワクするもの」という全部盛りな要求に、料理長が必死で応えた作品です。
ちなみに、「安土御献立十六日之夕膳」は、何を食べたかの記録しかなく、レシピは掲載されていません。
そのため、学芸部長さんや、学芸員の原さんから歴史アドバイスを元に、宝善亭の料理長の近澤昇さんが料理で表現したそうです。
そのメニューと解説を紹介します。資料の提供は学芸員の原さんだそうです。
食前酒・・・赤のぶどう酒 信長の時代から飲まれていたうるか・・・アユの内臓・卵を塩漬けにしたもの
かまぼこ・・・魚のすり身を串につけて焼いたもの。現在のちくわの形。
茹で蛸・・・タコは茹でて、イボを取り除いて皮を剥いて使う。(腐敗防止のため)
このわた・・・ナマコの内臓を塩漬けしたもの。
鮑・・・アワビは古くから会の王者として賞味され不老長寿の縁起物とされた。
鯉・・・「鯉にまさる魚はいない」『四篠流包丁書』(1489)にある
スズキ・・・室町時代以降、美味な魚や鳥「三鳥五魚」として定め、スズキはタコやコイとともに五魚に含まれる。
茄子のつぼつぼ・・・信長時代、シギを酒で煎り茄子に詰めたものを現代風の調理法にしたもの。
鴨・・・シギの焼き物の代わり、鴨の塩焼き。
マス塩焼き・・・マスは近江の特産であった。切り身にsて塩をして焼いたものを今回は塩麹に漬けて。
麸・・・生麩を味噌につけてあぶったもの
焼味噌・・・信長の好物で、味噌にネギ・生姜を合わせて焼いたもの
宇治丸・・・ウナギを丸のまま焼き、醤油と酒を合わせてタレをつける。醬油の使用はこの頃始まった。今回は開いて焼
いたものを炊いて茶漬けに。
湯漬け・・・せっかちな信長あご飯にお湯をかけて焼き味噌などと一緒に食べた。
瓜味噌漬け・・・香の物は古来より味噌のことを指す。
羊皮餅・・・安土桃山時代初期の茶会の記録にあるが、その製法・形状などはわからない。信長のイメージにあわせたもの。
原さんいわく、「食が溢れている今となっては珍しいものではないけれど、当時としては全国各地から取り寄せた最高の食材でつくるおもてなし料理なんです。」御膳が運ばれるたびに、家康は驚きと感動が止まらなかったかもしれません。
ますます、御膳はどんなものか気になりますよね。さっそく内容を見ていきましょう!
今となっては貴重な食材も!信長御膳の全貌
こちらが信長御膳の全体です。いろいろなお料理が並んでいて豪華ですね。
こちらが湯漬けと焼き味噌、鯉汁。
焼鳥、マスの焼き、麩田楽。肉が食べられなかったイメージですが、戦国時代でもシギなどを食べてたそうです。
宇治丸。ウナギのことです。
実は3回のやり直しを経て完成したという「茄子のつぼつぼ」。
家康をもてなす際、信長から担当を任されたのは明智光秀。真偽はさておき、有名な逸話はそこでの失敗を信長に叱責され、恨みに思って本能寺の変が起きるというもの。
それを匂わせるかのように、明智光秀の家紋であり土岐氏の印「桔梗」の麸が載っています。
茄子のフタを開けてみると、鶏挽き肉がぎっしりつまった美味しい逸品。
当時のごちそうのお魚スズキ。醬油ではなく、お酢でいただきます。
こちらが女性のために力を入れたというデザート、羊皮餅。
信長のイメージでどーんと大きな金箔が載っています。派手なスイーツです。
上品な甘さの餡が入っていました。金の器に金箔、輝きが眩しい!!
お味はどれも美味しく、鯉汁は生臭さは一切なく、上品でちょうどいい脂加減でおいしかったです。
焼き味噌は料理長のアイデアらしく、そのまま食べても湯漬けで食べてもどちらもおいしくいただけるというすぐれもの。
どれも美味しく、しっかりお腹も満足します。
信長のおもてなしかと思うと、恐れ多いですね。
この信長御膳は貴重な食材を使っているため、必ず3日前までに宝善亭さんへ予約が必要です。
天下人の城展を見て、この御膳を食べるとより展示会を楽しめるはず!