8月6日に行われた千田嘉博先生と富永商太画伯の「江戸城天守復元トークセッション」。
前期の展示の目玉である「江戸城天守復元図」にちなみ、監修者の千田嘉博先生とと復元画家の富永商太画伯が、復元図を作るまでの過程などをお話してくださいました。
【速報】天下人の城展特別講座「江戸城天守復元トークセッション」(by千田嘉博先生、富永商太画伯)
なかなかお二人でトークセッションをする講演はないので、とても人気だったようで、抽選に当たった幸運な200名の方が参加することができました。
ちょっとしたダメ出しで総やり直し。復元図の裏側
なぜか真田の陣羽織をお召になって登場された千田先生。公演前からみなさんのサインや写真に対応されていました。
まずは陣羽織を着た千田先生の挨拶から。
「実はお城の展示は非常に難しいもの。しかし今回の天下人の城展は貴重な資料を全国から集め、発掘品や関連書状、刀、復元図などさまざまな角度からお城を楽しめる素晴らしい展示になっている。」と、天下人の城展の魅力を語ってくださいました。
この展示は「お城の可視化」にこだわっているそうで、その「可視化」を担っているのがこの復元図です。
勝幡城の復元図から、先生と画伯のトークセッションが始まります。
現在の勝幡城は人口の運河となっていて、遺構はその下に・・・。
そんな姿を見ても「どこがお城?」と想像ができないので、現在わかっている遺構や資料から復元図を作成すると、勝幡城を視覚で捉えることができます。
そして名古屋城二の丸、大坂城、伏見城など、今回展示されている復元図の苦労した点、ポイントなどを語ります。
話は白熱していますが、ここで笑いの神が。
実はアナログな画伯はスライドの説明を、指し棒でやりたいと言います。
しかし、画伯の背中が死角となるお客様もいらっしゃるので、先生が「レーザーポインタをつかって座って説明したら?」とアドバイス。ちょっと渋る画伯。このやり取りに会場は爆笑。
レーザーポインタに挑戦するも、その使い方に戸惑う画伯は、結局座って説明できず立ち上がってレーザーポインタを使ってしまいます。結局死角は消えないままでしたが(笑)
画伯の天然ぶりがツボに入ったお客様、たくさんいらっしゃったのではないでしょうか。
歴史を可視化するための復元図
そして、小牧山城と江戸城の2つに絞ってどうやって復元図ができていったのか、過程をお話されました。
まずは小牧山城。2014年当時の復元図と2017年の復元図を比べたスライドを見ましたが、全く違いました。当時からの情報の差が、復元図の変化の過程でも追えるところが面白かったです。
そして復元図の作り方が解説されます。調査を一緒に行った後、まず富永画伯が自分が思う復元図を書いて先生に提出するそうです。しかし、1度でOKは出ません。その復元図に先生からたくさんの適切すぎるツッコミが入ります。
ボツになった図、ボツになった理由も見せていただけました。これは初公開の図なのではないでしょうか。
また、城の遺構がわかってもその中に何がどう配置されているか、今ある情報から適切なものを考え、復元していかなければならないのです。
例えば対面所の目の前の庭には、滝が流ている図を書いて出したらNG。
理由は小牧山城は山の上で、どうやって水を引くか?無理があるということで庭の様相を変更する。
さらに遺構で出っ張った部分があったとして、そこには何があったかを考えるのも適当ではダメ。なぜそこがわざわざ張り出している必要があるのか、張り出してるとすればどういうものがあったのかを絞込み復元してく・・・。
それを繰り返し、復元図を作っていっているのだそうです。
たった1枚の復元図にかける想い
そしてメインの江戸城の話へ。
江戸城は「【147,149】江戸始図と今江戸図 400年ぶりに蘇る!徳川家康の最強の江戸城・巨大天守」でも、見どころや背景が解説されているので、ぜひご一読を!
豊臣対策のために攻める気満々なお城だった江戸城天守の復元図が展示されていますが、これを作る過程も一筋縄ではいかなかったようです。
まずは「江戸始図」の情報から、どういう構造になっているかを現状の情報、当時の背景、城の建築工法などからどういうものであったかを組み立ていきます。
たった1枚の図を作るだけでもこんなツッコミが入ると、すべてやり直しになるという手作業ならではのダメ出し恐怖があるのだそうです。
たった1枚の復元図にかける専門家たちの情熱は、まるでNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見てるような気分になりました。
「復元図によって見えてくる歴史に注目して欲しい」と、先生がお話されていました。
たった1枚の図ですが、この中にたくさんの情報が入っていてどう読み解くか。
改めて、天下人の城展の復元図をじっくり見たくなりました。